黒執事 Christmas at midnight
第2章 前篇 聖なる時の選択を
「ああ、やっと見つけたよ我が右腕! 肩から切り落としてやろうと思ったのに、失敗してしまってごめんよ? でも大丈夫……今日、ちゃんと貰い受けるからね」
中心にいた男が、信じられないくらい大きな斧を抱えて出て来る。斧にはびっしり血がこびりついており、錆びた臭いが漂って来る。アリスは顔をしかめた。
「さあ! 俺にその腕を……捧げろ!!」
男は思い切り斧を振り下ろす、グレイはアリスを庇いながらそれを難なく避ける。
「はあ? あんたにくれてやる腕なんてないよ」
グレイは剣を抜くと、いつもの調子で笑いながら構える。けれど肩の傷が痛むのか、少しずつ呼吸が乱れ始めているのをアリスは知る。長期戦になった時、分が悪い。しかし今のアリスの手元に武器はない。それもそのはず。愛用の銃はアンダーテイカーのところだし、普段持ち歩いている護身用の銃は先程慌てて出てきたせいで置いてきてしまった。
どうする? 考える間もなく、グレイが剣を打ち込み始める。相手もなかなかやり手みたいだ、避けながら隙をついて斧を振り下ろしてくる。
「図体でかいくせに、ちょこまかと鬱陶しい……なッ!」
「くっ……」
相手の男の頬が、グレイの剣で赤い線が出来る。血が流れたかと思えば、男はいきなり唸り声をあげ突進してきた。
「ぐっ……!?」
「グレイ!?」
突然のことで咄嗟に避けられず、グレイはそのまま壁へ背中から叩きつけられる。その場に倒れたグレイは、何とか起き上ろうとするが肩の傷が完全に開いたのか苦しそうに息を吐いて、肩を押さえていた。アリスは慌てて彼へと駆け寄る。