黒執事 Christmas at midnight
第2章 前篇 聖なる時の選択を
「なんだ、可愛いとこもあるんだね。怖い? 手を離してあげようか?」
「離したら殺す! 私があんたを殺す!!」
「はいはい」
愉快そうに笑いながらグレイは遠くの方まで移動し始める。けれど、すぐに路地裏の方まで下りていく。
「グレイ……?」
「……」
何も言葉を返さないグレイを心配して、アリスは声をかける。すると、彼の肩の傷辺りが、血で滲み始めていた。
「グレイ、貴方傷が開いて……!」
「少し……黙っててくれないかな……」
「グレイ!」
「ああもう、どうして女ってこうも煩いのかな……静かにしろって!」
「っ……!」
がっとグレイはアリスの顎を掴むと、奪うように唇を重ねる。グレイはもう片方でアリスの肩を掴んで、彼女の唇の隙間から舌を入れて弄び始める。
「んっ……!!」
「……んんっ……はぁっ」
彼が唇を離せば、アリスは潤んだ瞳で力なくグレイを睨む。
「何して……っ!」
「大人しくしてて。それとも……」
グレイのアイスブルーの瞳が、アリスのルビーの瞳と重なる。
「犯されたいの……?」
「……! い、嫌……っ」
「……そんなことしないよ。させもしない」
「……グレイ?」
「アリスを傷付けていいのはボクだけ。汚していいのも、泣かせていいのもボクだけ。だから今回だけは守ってあげてもいいよ。アリスを殺すのはボク、絶対誰にも傷つけさせない」
アリスの細い手首を掴むと、グレイは路地裏の入り口を睨み付ける。そこには既に、怪しい男達がこちらを見つめて不敵に笑んでいた。