黒執事 Christmas at midnight
第2章 前篇 聖なる時の選択を
「……腕をコレクションにしている奴が、人気のない路地裏で腕の立つ男の腕を集めているとか。その肩の傷……その犯人にやられたんじゃないの?」
「さあ?」
「もし本当だとしたら、そのまま帰すわけにはいかないわ! 中途半端に帰したせいで死にましたなんて絶対許さないから」
「君ってそういうのばっかりだよね。お人好しなの? ボクの知る限りでは、君はお人好しなんかじゃなかったと思うけど?」
「ええ、勿論その通りよ。だからこうして意地悪く質問してるんじゃないの」
「……」
グレイは観念したのか「はいはい」と言って大きく溜息をついた。彼にとっては、ばれたくないことだったのだろうか?
「アリスはさ、ボクの怪我の原因を知って本当にどうするつもり? 君には関係ないでしょ。殺すよ」
「……別に、どうもしないわよ。ただ貴方の関わっていることの危険度を知っておきたかっただけよ」
「あっそ……」
アリスは窓を開けると、空気を入れ替え始める。グレイは目を伏せて、ただ風を感じていた。彼が今までどう過ごしてきたかはわからないが、思ったよりも穏やかな時が二人の間に流れ始めていた。
「あのさ……アリスは、幼かったあの頃に戻って全てやり直したいって思ったことはないの?」
「え……?」
目を丸くしてアリスはグレイを見た。一瞬考える素振りを見せると、窓の外を眺めたままアリスは話し始める。