黒執事 Christmas at midnight
第2章 前篇 聖なる時の選択を
「……温かいね、君は」
「グレイの方が温かいわよ。てか、熱があるんだから離れなさいよ……もっと熱上がるわよ。
息……苦しそうよ」
「あのさ、君はちゃんとわかってる? ボクはね、君を殺そうとしかしない人間だよ。そんなボクに……こんなことしていいの? 助けたりなんかして」
「だったら次こそは、私の目の前で怪我して倒れていたりしないでくれる? 迷惑だわ本当に」
「……拾い物には福あり、だよ」
「毒ありの間違いでしょ」
「え、何それ上手い事言ったつもり?」
「どこが……?」
「……いつの間に仲良くなられたのですか?」
二人の視線を集めるように、大きな音を立てクライヴが氷枕を持って入って来た。二人が一緒にベッドに入っているのを見兼ねて、クライヴは手際よくグレイからアリスを奪還する。
「何すんだよこの執事!」
「グレイ様、貴方は今熱が御座いますね? 人肌が恋しくなるお気持ちもわかりますが、姫様は貴方にかまけている暇はありません。邪魔なのでさっさと寝ていて下さい」
「お前の執事さ……口悪い」
「でも本当に寝ていた方がいいわ。早く怪我を治したければね」
「……治ったらまとめて殺してあげるよ」
口ではそう言いながらも、布団を深く被ってグレイはそっぽを向いた。クライヴからアリスは氷枕を受け取ると、グレイの頭の下にいれてやる。
「早く、良くなりなさいよね。その時には返り討ちだから」
アリスは優しくグレイの前髪を払って、にっこりと笑う。何がおかしいんだと言いたげにグレイは睨み付けるが、あまりにもアリスが穏やかに笑うものだから小言を言う気さえ失せてしまう。