黒執事 Christmas at midnight
第2章 前篇 聖なる時の選択を
「でも……私」
「いいんだ。それは僕からのいつもお世話になっている友人への、ささやかなプレゼントだと思ってくれ」
「全然ささやかじゃないんだけどっ!? 無駄に豪華なんだけど!!?」
「不満か? 仕方ないな……もう一回り大きい家を……」
「ここでいいっ!!」
「なら決まりだな。早速引っ越しの準備だ、セバスチャン」
「かしこまりました」
いつの間にかクリスマスパーティーの話ではなく、アリス達の引っ越しの話へと話題は変わっていった。
◆
ごそごそとアリスが身じろいだ。何やら窮屈な感覚を覚えて、ゆっくりと目を開ける。
「え……っ」
何故か、誰かの腕に抱かれている。相手はゆっくりと呼吸を繰り返し、気持ちよさそうに寝息を立てている。起こさない様にと顔を上げれば、相手はやはりグレイだった。
「どうしてこんなことに……まさか、途中で起きたの?」
寝ている彼は、本当にそのままであれば何とも可愛らしい寝顔をしている。つんつん、と思わずアリスは彼の頬をつついてみる。すると「んっ……」と声を漏らしたことで、びくっとアリスが肩を揺らした。
アリスが思考する暇もなく、グレイもまたゆっくりと目を開けた。
「……。おはよう」
「……えっ、あ……うん。おはよう」
意外にものんびりとした口調でグレイが挨拶するものだから、アリスは拍子抜けしながらも挨拶を返す。アリスが彼の様子を伺っていると、ぽつりとグレイは呟く。