黒執事 Christmas at midnight
第2章 前篇 聖なる時の選択を
「私はアリスを、愛していますよ」
「っ……」
「あ、姫様の顔が赤く……」
「これで満足!? さっさとクリスマスパーティーに関する話を進めなさいよっ」
「仕方ない。これ以上やるとアリスにぶち殺されそうだからな……というわけで、それぞれ何かいい案を出してみてもらえないか? パーティーに必要なものや、やってみたいこととか。それと……アリスにお願いがあるんだ」
「何かしら?」
「アリスにも是非、お客様としてクリスマスパーティーを楽しんでもらいたいので一人暮らしをしてみないか? 君が屋敷にいると驚かせることが出来ない。その間に住む場所として使ってくれてもいいし、気に入ればそのまま住んでくれてもいい。君も以前から別居したいと話していたな?」
「それは……そうだけど」
シエルが一枚の書類をアリスへと差し出す。
「もう家の手配を整えている。一人で住むには広すぎるくらいだと思うが、どうせクライヴも連れて行くだろう? ならばそれでも余裕のある家だ。広さの問題はないだろう。後は……街の喧騒からは離れているから普通に気に入るとは思う。何せ、僕の別荘の一つだからな」
「街中に別荘ね……」
ツッコミは後回しにして、書類にアリスは目を通した。いつまでも彼のお世話になるわけにはいかず、お金が溜まり次第屋敷を出ていくつもりでいた。遊びに来るくらいならいつでも出来るし、ただ居候という立場で屋敷にいるのがアリス自身がそろそろ耐えられなくなってきたらしい。
不満はない。単純にプライドの問題らしい。
その辺はシエルも察してくれているのか、前向きに話を聞いてくれていた。流石のアリスも、既に家を用意されてそれを与えられるとまで考えていなかったらしいが。