第5章 好敵手
烏野との練習試合の翌週。
今は英語の授業中。
教壇では、カナダ人の英語教師が流暢な英語で話をしている。
アメリカ生活の長い俺は、英語に苦労することもないため、適当に聞き流す程度にし、うつらうつらと船をこいでいた。
ふと、耳に聞こえてきた" Surprise "という教師の声。
Surprise (サプライズ)………
"奇襲"か…………
何気なく飛び込んできた単語を頭の中で繰り返す。
すると、浮かび上がった1つのフレーズ。
"そうだ、烏野に行こう。"
どっかの鉄道会社のCMのようなフレーズだったが、その言葉により俺の意識は覚醒させられた。
幸運なことに今日は月曜日。
すなわち部活が休み、ということだ。
思い立ったら吉日。
こりゃ、行くしかないわな!!
____昼休み
例のごとく女子の猛攻撃から逃げ、屋上へと避難してきた及川と岩泉と俺の3人は昼飯中。
しかし、目の前の二人の顔は唖然とした表情のまま固まっていた。
「………待て。言っている意味がわからない。」
「え?ちょ?!何で!?」
驚いたままの2人の様子を然程気にすることもなく弁当をつつく俺。
「あ?何でって………道場破り?」
「は?意味わかんねぇんだけど。」
眉間にシワを寄せ、納得いかない、といった表情で睨み付けてくる岩泉にニィと口角をあげ意味ありげな笑みを返す。
「………ちょっと試したいことがあんのよ。」
「試したいこと………?そっそれって飛雄にトスあげてもらうことじゃ……!?」
俺の腕を掴み慌てた様子を見せる及川に、ちらりと視線を送る。
「ちげーよ。そっちじゃない。………まぁ、遊びに行ってくるだけだし、一も徹もオーバーに取んなって。」
俺の腕をつかむ及川の手に力が籠る。
ったく………
こいつ本っ当に俺が他のセッターのボール打つの嫌うよね…
確かに今は及川の上げるトスが一番馴染むけど、色んなセッターのトスに対応できないと代表選抜の時とか困るしね。
___Surprise.