第5章 好敵手
するとすぐにその頭に勢いよくバレーボールがぶつけられた。
放たれた元を見ると眉間にシワを寄せた岩泉の姿。
「てめぇはセッターだろうが。トスで負けるなんて言ってんじゃねぇ!!グズ及川!!」
………あの……
今、危うく俺にもボールが当たりそうだったんですけど……
あれ?
これ、もしかしてさっきの仕返し……!?
ちらりとその顔を見ると、ニィと意地悪く上がる口角。
____!!!!
ぜってぇわざとだっ!!
あわよくば俺にも当たれってやつだったんだろ!?
くそっ……
やはり、"青城の鬼"と呼ばれるだけあんな……(←呼んでるのは俺だけだが)
悪事を考えさせたらピカイチだな。
岩泉をジト目で睨み付けていると、くっついていた及川が口を開いた。
「ちょっ!岩ちゃんっ痛いからっ!!………でも、本当に厄介だよ。飛雄ちゃんとチビちゃんのペアはさぁ。……まあ、次は負けないけど。」
「………ん。公式戦なら俺も出るんだ。負けるはずねぇよ。………でも、あの影山のトス、一度は打ってみてぇけどな。」
「___やだっ!!悠にトス上げんのは俺じゃなきゃ嫌だっ!!飛雄になんて……渡さないからっ!!」
ぎゅうと力一杯抱きついてきた及川のあまりの必死さに驚いた俺だったが、すぐにその横っ腹へと拳を打ち込んだ。
「___だっ!?ちょっ何___「だったら出来ねぇなんて言うんじゃねぇよ。」っ!!」
俺の言葉に目を開く及川。
「一の言う通り、お前はセッターなんだろ?べつに寸分狂わないトスを上げれなくとも、スパイカーが気持ちよく飛べるトスを上げられんだったら俺らにとっちゃそっちのがいいんだよ。」
「………それなら、自信ある。俺が…… 悠を気持ちよく飛ばせてあげる。」
真っ直ぐに見つめてきたその目を見返し、ニヤリと笑う。
「そうしてくれ。スパイク命の俺にとってトスは要なんだ。俺を自由に飛ばせろ…………徹。」
一瞬にして笑顔へと変わる及川の表情。
うん、うん、と大きく頷きながらさらに強く抱きついてくる。
____Leave me!