第5章 好敵手
「いくら攻撃力が強くてもさ…その"攻撃"まで繋がなきゃ意味ないんだよ?」
すっと挙げられた指先が示す先には、ネットの向こうの長身メガネくんの姿。
………チッ………性格わりぃな、徹のヤツ。
明らかにレシーブ苦手な1年を狙うなんてよ。
心の中でため息をついていると、高らかに挙げられたボール。
長い助走から跳ね上がった及川の体が弧を描き、そのまま右手が降り下ろされる。
ドッ
そこから弾き出されたボールは急回転しながらものすごいスピードで敵コートへと飛んでいく。
そして宣言通り長身メガネくんの構える先へぶつかると、ボールはそのままコートの外へと弾き飛ばされた。
……さすが、及川。
レシーブが苦手な選手を的確に狙って打ち込んでいる。
戦術として正しいんだけどな……
チームの勝利のための判断ではあるが、正直俺はこの手のことを好まない。
下手なヤツが取れないのは当たり前。
だから俺はレシーブやブロックの巧いヤツを打ち負かしてやる方がよっぽど燃える。
特に、失敗しても何度でも食らいついてくるようなヤツは、堪らない。
そういうヤツにとことん打ち込みまくって勝利を掴む方が得られる達成感は高いのだ。
まぁ、これはあくまで"俺の"プレーについてのことだから、あまり他の奴には共感されないけどな。
コートの中では再び及川の超高速ジャンプサーブがレシーブの失敗により外へと弾かれた。
すると、烏野側の守備配置が変わり、コート中心にレシーブが得意な主将を配置し、長身メガネくんはサイドラインぎりぎりの位置へと下がった。
……………あ。
嫌いじゃねぇかも……。
俺の視線の先にはどっしりと構える烏野の主将の姿。
及川のサーブの威力を知った上で迎え撃とうとする様子にゾワリと全身の血が騒ぐ。
きっと及川は再びメガネくんを狙う。
でも、俺は烏野の主将が気になる。
あれあれ。
あーゆーヤツを打ち負かしたいんよ。
あの顔付きとかさ、堪んないじゃん?
____Unexpected combat force.