第5章 好敵手
呆れる俺の肩に及川の腕が回り、ぐいと引き寄せられる。
「……………ちゃんと見ててね?俺の……プレーを。」
………やっぱり多少の緊張はしてんじゃねぇか。
強がりやがって……
まぁ、そりゃそうだよな。
卒業以来、同じコートに立ってなかったしね。
「あぁ。………見ててやるから………みっともねぇプレーすんなよ?」
ニィと笑みを浮かべると、嬉しそうに頷く及川。
見せてやれよ。影山に。
"現在"のお前を。
体育館へと足を踏み入れた俺たちは、己の目に写った光景に少し驚いてしまった。
「ありゃ?1セット取られてるじゃん。」
その事を然程気にしていない様子の及川は呑気な声を発している。
「キャーっ!及川さぁ~ん♡」
「銀鏡くぅ~ん♡格好いい~♡」
俺たちの登場により、体育館にこだまする女子の黄色い声。
皆すげーな……
こんな時まで見に来るなんてマメだよね。本当。
それに気づいた監督が振り返り、及川の容態確認をしている。
アップしてこいって言われてる。
やっぱ出るよね。そりゃあ。
つか、今まで走ってきたから結構体温まってんじゃねぇの?
俺はそんな及川と監督の元を離れ、コーチの横に立つと、コートへと目を向けた。
「おう、銀鏡。及川に付き合わせて悪かったな。」
コートに向けられていたコーチの視線がちらりとこちらを向く。
「…まぁ、完治してただけ良かったッスよ。………それより、これ、どうなってるんですか?」
目の前のコートでは、3セット目が始まるも、烏野の速攻攻撃によりなかなか自分達に流れを作り出せずにいる青城メンバーたちの姿。
………出てぇ………
何あの、オレンジ頭のチビッ子。
ピョンピョンとおもしれぇ動きしてんじゃん。
……金田一とか見事に翻弄されてっし。
まぁ、岩泉はさすがに飲まれてはねぇみたいだけど。
でも、生憎、俺はそんなに甘くないのです。
___Unexpected events.