第5章 好敵手
「………徹…キメェ。早く離せ、バカ。」
更に俺を抱く力が強まる。
「………やだ、離さない。だって…………」
「あ?」
「…………なんか、足首捻っちゃったみたい☆」
「はぁぁぁぁああああっ!?!?!?」
夕焼け色に染まる空へと響き渡る俺の声。
それに気づき何処かから駆け寄ってきた岩泉の姿。
「あ、あ、足を、挫いた………だと?」
及川の意味不明発言により、俺の声は震えていて、その言葉を聞いた岩泉の顔色はみるみると赤に染まっていく。
「うん。」
「………いつ?」
「今。悠に抱きついたときにね。」
日頃から及川による俺への抱きつき行為は、害しかないようなものだったが、これほどまでに無意味かつ有害な事故を起こすことになるとは…………
………これは………今まで何だかんだでこれを"良し"(正しくは諦め)としてしまっていた俺に原因があるのか…?
いや、待て、早まるな俺よ。
この全ての諸悪の根元は、
このクソ及川にあるのだ!!
「「~~~こんのっクソ及川~~~~~!!!」」
再び夕焼け空に轟く男たちの声。
その声を一身に浴びる男は、テヘペロ顔。
……………さぁて、
この目の前の阿呆をどう調理してやろうか………?
ちらりと隣に視線をやると怒りに満ちた岩泉の視線とぶつかる。
そして、二人は静かに頷くと
同時に拳を掲げ、ムカつくイケメン面をした男の脳天へと力の限り降り下ろした。
____ガッツン!!
「痛"っだ~~~!!悠も岩ちゃんもヒデェっ!!足挫いて可哀想なの俺なのにぃ!!」
半べそ状態の及川に鋭い視線を送る俺と岩泉は、怒りを通り越え、今は呆れ返っていた。
仮にも、倒したい!と常日頃話していた因縁の相手との対戦が間近に迫っているというのに、何故コイツはこうもヘラヘラとムカつく笑顔を見せているのか……
もう、常人には宇宙人の考えは理解できませんよ!!←
_Accident!