第4章 理由
「・・・徹。俺さ・・・・・・」
ゆっくりと口を開く。
俺は、
及川、
お前に・・・・・・・・・伝えたいことがあるんだよ。
スゥ―――・・・・・・
一度だけ大きく息を吸い込み、
目の前にいる及川の目を見据える。
「・・・・・・徹。」
名前を呼び、胸倉を掴んだままの手にそっと自分の手を重ね、上体を起こす。
「俺・・・さ、この5年間・・・すげー楽しかった・・・・・・だけど、その何倍も、何万倍も______________怖かった。」
「・・・・・・。」
ぽつり、ぽつり、と吐き出される俺の言葉。
及川はまっすぐに俺を見つめ、次の言葉を待っている。
「中1の夏に・・・親父の仕事の都合でNYに行くことになって、行った先で出会ったバレーのレベルに身震いしたよ。”すげぇ!こんな世界があったのか!”って・・・。こんな環境で自分を高めていけるのかと思うと嬉しくて、嬉しくて、どんなにきつい練習も、鍛錬も全く苦じゃなかった。」
「・・・。」
「・・・毎日、毎日、少しでも高く、少しでも速く、強く・・・ただがむしゃらに上を目指した。来たばっかの時は、全く歯が立たなかった相手にだんだんと勝てるようになってきて、チームの中で自分の地位っていうのが確立してきてさ。・・・本当に嬉しかった。」
「・・・うん。」
「コーチや監督もさ、俺の足りないところ、直すべき課題とか細かく教えてくれてさ。そういうの分かる度に悔しくて、でも楽しくて。もっともっと巧くなるんだって。倒せない選手を、チームを、俺に立ちはだかる壁を、俺の手でぶっ潰して超えていくんだって毎日そんなことばっか考えてた。・・・そうしたらさ、ハイスクールにあがる頃には______”最強”って呼ばれるようになった。」
_____Truth of things.