第12章 合同合宿
立ち上がりトレーを持つ反対の手を振りながらその場を後にしようとする俺に菅原と澤村の声がかかる。
「えっ悠出るの?!うわーっ楽しみだわ」
「あったり前じゃん。……コテンパンにしてやんよ。」
「………オイオイ、そう簡単に俺たちはやられねーぞ?」
なおも絡んでこようとする二人を笑顔であしらいながら、少し前を歩く及川の肩に腕を回し、その顔を覗き込んだ。
不満たらたらな表情のままチラリと向けてきた視線に内心ため息をつきつつも、表情には出さずにその跳ねた髪の毛をわしわしと撫でてみるとすぐに反発の声が聞こえてくる。
「ちょっ!?何すんのさっ!」
慌てて反応してくる及川に、くくっと小さく笑いながらさらに激しく頭をグシャグシャと掻き乱してやると、迷惑そうにしつつも嬉しそうな様子を見せる及川は、すっかりいつもの調子で引っ付いてくるのだった。
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午後からの練習は烏野とのゲームから始まった。
開始早々、調子のすこぶる悪い影山がサーブをミスしたことを皮切りに、澤村と西谷がサーブレシーブでお見合いになったりと、他にも何だか全体的に調子が今一つな烏野の様子に、及川をはじめとする青城メンバーたちは半ば呆れた様子を見せていた。
烏野がタイムアウトを取り、今はそれぞれの陣地で選手たちが対策を練るはずの時間であるが、青城のメンバーはというと、口に出す言葉すら無いというかのように黙りこんでいるわけで。
「………えーと、これは何なの?ふざけてるのかな?」
俺の肩にもたれるように腕を乗せる及川が苛ついた笑顔で呟くと、次々と吐き出される烏野への散々な評価たち。
「インハイ予選の時のが強かった気がすんだけどよ。今の烏野じゃうちの相手になんねー。」
「………確かにね。俺出る幕無いしなぁ。……ちょっと拍子抜けだよな。」
「……ま、俺としては飛雄が調子悪いのは万々歳だけどね~♪」
「「………………。」」
不調の影山を楽しげに見つめる及川対し、俺と岩泉が哀れな目線を送ると、こちらに気づいた及川が俺たちへと視線を移し、その顔を不満そうに歪めた。
「……何?」
「………いや、お前本当に性格悪いなって。」
「……本当救いようのない性格の悪さだよな。」
__Uneasiness