第12章 合同合宿
その後もギャアギャアと煩いアホ川を無視していると、コーチから"退陣"の命が下り、またしてもコートから離れなくてはいけない現実に肩を落としてしまう。
いやしかし、ものは考え様ってやつもある。
ここはじっくり烏野の様子を観察して見るのも、無駄ではないはずだ。
「あーぁ、まーたやってるよ。天才くんも大したことねぇなー。」
呆れた様子で声をもらす矢巾の声を聞きながら、今目の前でこのゲームで何度目かになる影山から日向に上がったトスがスパイカーの手に届くことなく床へと落ちた様子を見つめていた。
今の烏野は不自然なくらい全てが噛み合っておらず、ただそれぞれの選手が不調とかそういったものとは違うように思える。
さっきからやたらと妙な胸騒ぎがするのは、きっと烏野の大きな進化の前ぶれのような不気味な姿に反応しているのだろう。
ピーーッ
及川の打ったサーブが月島によってコートの外へと弾かれると、烏野が惨敗したことを告げるように笛の音が鳴り響く。拍子抜けと言わんばかりの表情で戻ってくる及川たちの姿に思わず苦笑しつつ、笑顔で皆を迎え入れた。