第3章 帝王
これで、心置きなく及川と…
アイツのバレーと向き合える。
悪いけど、サーブも俺の専売特許なんだよ。
だって、俺は攻撃してなんぼのポジションだかんね。
…………あ、あとね、
マジで"チュー"は阻止したいんです。
ファーストキスではないけれど、無理無理。
あんなやつに俺の唇は奪わせませんから!!
3対3の試合形式の練習の中、その時はやってきた。
「悠~っ準備はいーい?」
間延びした、人をイラッさせる話し方で声をかけてくる及川。
チッ…………んだ、あの顔。
余裕寂々って感じで笑いやがって……すげーイラつく。
……なにあれ。ぶっ潰したいんだけど。
今、手元にボールあったらアイツの顔面狙って本気中の本気スパイク打ち込んでるとこだったよ。
……命救われたね。おバカさん。
「おー。いつでもどーぞ。主将さま?」
口角を上げ挑発的に笑ってみせると、及川は目を細め、ボールをバウンドさせた。
ダンッ
ダンッ
ボールが2回、床を弾く音
「____いくよ。」
ピッ
声とともに高く上がっていくボール。
長めの助走でついた勢いのままトップスピードで跳ね上がる体。
ブワァッ
最大限に後方へと引いた右腕が、物凄いスピードでボールを捉える。
ドッ
低く重い音とともに打ち込まれた球は、強い球速のままこちらのコートへと侵入してくる。
_____視えた。
ボールの軌道に合わせてレシーブの構えをとる。
腕にボールが触れる瞬間、膝を曲げ、強すぎる勢いを消す。
…トンッ
「チッ!」
想定以上に高く上がってしまったボールに、舌打ちする俺。
勢い、殺しきれなかったか………
ちと、侮りすぎた。
味方の矢巾に渡ったボールが再び上がる。
金田一がそれに合わせてスパイクを打つが、
ブロックされ、ボールはサイドラインを割った。
ピッ
笛の音がなり、及川のチームの得点番が捲られた。
__Ability of rival.