第3章 帝王
……………アッタマきた。
確かに牛島から及川のサーブはかなりの上級レベルだと聞いている。
でもね、
"お前じゃ止められない"と言われて
黙ってられるほど俺は出来た人間じゃないんですよ。
………やってやろうじゃん。
つか、完璧に受けきって、オメーのその余裕面………さっきより更に残念なことにしてやる。
「悠っサーブ練やんぞ!」
ぐい、と腕を掴んできたのは岩泉で、俺はそのまま引きずられるようにして先頭へと連れていかれた。
「…………一ぇ……俺さぁ、自分でもどうかと思うほど負けず嫌いなんだよねぇ…………。」
ちらりと視線を寄越した岩泉。
俺は気にせず手に持つボールをシュルリと回す。
「………ねぇ、"帝王"ってどう意味かわかる?」
視線を上げると、ネットの向こうに広がるコートを見据える。
トッ
高く上げたボールを見つめる
軽く助走をつけ、
深く深く踏み込み、床を蹴り
飛ぶ____
掌に感じるボールの反発を感じながら
後ろに引いた左腕を降り下ろす____
ズドンッ
ラインギリギリに落ちたボールは重い衝撃音を響かせた。
「"帝王"は"大王"より 上 なんだよ。」
「………超高速スパイクサーブか。……さすが、"帝王"……だな。」
ニィと笑う岩泉。
俺は真っ直ぐに岩泉を見つめる。
「_____徹のサーブ、止めちゃうからね。俺。」
伸びてきた岩泉の手が俺の頭をワシャワシャと撫でた。
「………心配すんな。アイツはそれでも、上がってこれるから。………ただのバレー馬鹿だ。だから……余計な心配すんじゃねーよ。」
くしゃりと顔を歪めて笑うと、岩泉も笑った。
「ま、お前も、大概バレー馬鹿だけどな。」
「うっせっ!オメーもだろ!エース様!」
岩泉は言わずとも俺の本心を汲んでくれる。
すげーな、何でわかんだろ。
でも、いつもそれに救われる。
ありがとう、一。
__I think you have hidden.