第12章 合同合宿
「………ん?悠、どうしたの?」
するとタイミング良く及川もこちらを振り向き、重なった視線に、別に、と答えると不満そうな顔に変わる及川に内心ため息をつく。
「………いや、次は俺にトス上げろよ?」
「………もちろん♪楽しそうな向こうの雰囲気も勢いもぶっ壊しちゃってね。」
及川のうざったいウィンクをあしらいながら俺はふー、と長く息を吐き出す。
自分の中で騒ぎ立つ獣は今か今かと暴れだすタイミングを待っている。
視線の先には同じくこちらを見つめている赤葦がいて、俺は口角を上げ挑戦的な笑みを返した。
___次は俺の番だ
視線の中に込められた思いはきっと赤葦は感じ取ったらしく、途端にそわそわと落ち着きを無くした姿にくくっ、と小さく笑ってしまう。
ピッ
笛の合図が聞こえると間もなくして梟谷の12番がサーブを放つ。
「マッキーッ!」
「おーよっ」
放たれたサーブは花巻の安定感のあるレシーブにより綺麗な弧を描き、及川の元へと届けられる。
それと同時にスパイクモーションに入ったのは俺1人で。
任せられたこの場面で、梟谷サイドがブロックを3枚付けているのを承知で思いきり床を踏み込み、そして高く飛ぶ。
ギュ、
最高到達点にたどり着いた時には、既に当たり前のように俺の振り下ろそうとしている左手の先にはボールが存在していて、対峙すべくブロックに飛ぶ梟谷の木兎、赤葦、3番の3人の表情は皆一様に目を見開いていた。
それもそのはず、俺の頭は木兎らより頭1つ分高い位置にあるのだ。そんな俺にブロックなぞ意味をなさない。
ド ゴンッ
「「「____っ!?」」」
キュキュ
床にたどり着いた時には目の前ネットの向こう側では呆然と立ち尽くす3人の姿。
「………どうだ?凄ぇだろう?」
挑発するようにわざとらしい笑みを向ける俺に、3人はそれぞれ異なる反応を見せた。
「なっなっ何なんですか……!!……凄すぎますっっ!!」
顔を赤に染め、ブルブルと震えながら興奮した様子の赤葦。
「んなーーっ!?何であんなに高く飛べんだ!?ありえーんっ!!」
物凄いオーバーリアクションで頭を抱える木兎。
「………え、何あれ……チート過ぎじゃね?」
3番に至っては混乱しすぎて顔が強ばる始末だった。
___Overwhelm.