第12章 合同合宿
「………さっき黒尾にも言われたわ。それ」
「えっ……黒尾さんも、ですか……?」
俺の言葉に赤葦の眉がピクリと動く。
「俺………さっき……黒尾さんが銀鏡さんにファンだって伝えに行った時、正直焦りました。」
それっきり黙りこむ赤葦。
俺は赤葦の真意が読めず顔をしかめるが、赤葦に反応はない。
「………は?何で焦るんだ?」
改めて問うもののやはり反応はなく、質問に答えるつもりはないことが伺えた。
はぁ、と小さくため息を漏らし、黙りこむ赤葦の頭をワシワシとなで回すと、突然のことに赤葦は慌てた様子を見せる。
「ハハッちゃんと反応出来んじゃねぇか。……ま、答えたくないんだったらもう聞かねぇよ。」
俺の言葉に目を見開いた赤葦は「すみません。」と小さく呟き、顔を背けた。
俺はしばらくの間赤葦を見つめていたが、それ以上の反応は望めそうもないと判断し、再びコートへと視線を戻す。
そんなやりとりをしている内に目の前の音駒と生川のゲームは、音駒の勝利で幕を閉じ、赤葦は次の烏野との対戦に向け自陣に戻っていった。
………さて、うち(青城)は今音駒とやってた生川戦か。徹たちに発破かけにいくかね。
この合宿では1セット毎のゲームをひたすらぐるぐると対戦していき、負けたチームはペナルティとしてフライングでコートを1周するというルールが課せられていた。ちなみにこのペナルティは出場の有無に関わらずチーム全員で行うため、4戦目まで出場の無い俺であっても青城が負けたらフライングが待っているわけで。
本来なら面倒でも、今は暇なのだ。むしろ歓迎したいくらいだったりする。
「悠~♪」
聞き慣れた声が耳に届き、その声の方へと顔を向けると両手を大きく振りながら大声で俺の名前を呼ぶ及川の姿が視界に入る。
「……お疲れ。まずは1勝、おめでとう。」
今にも耳と尻尾が見えそうなくらい歓迎モードな及川の頭をポンと撫でると、及川はえらく嬉しそうな顔で「当たり前じゃん」と答えた。
すぐに岩泉たちも集まってきて、早速始まった森然の分析。
やはり岩泉たちも森然のコンビネーション攻撃に刺激を受けたらしく、森然の分析と同時に自分達の課題を話していた。
___Each person.