第10章 最大の好敵手
「悠っ!!マジでありがとう!!」
岩泉の何気なく放った言葉に思わず目頭が熱くなってしまった俺はバーカ、と笑いながら誤魔化して。
よく見たら岩泉の頬には一筋の涙が流れていて、隣に立つ及川なんて涙どころか鼻水まで垂らしたヒドイ顔してて、そんな2人を見てたら我慢してたはずの涙が再び込み上げてきてしまい、結局は俺も皆と一緒に泣いていた。
「25ー20
勝者__青葉城西高校!」
主審が告げた結果は、俺たちが全国への切符を手にしたことを高々に伝えた。
____
『『ありがとおござぁっした!!』』
礼を済ませ、俺たち青城は初めて白鳥沢を下し、全国大会への出場を決めたことに歓喜していた。
喜びに沸く中、ちらりと白鳥沢サイドを覗き見ると悔しそうな表情を浮かべる面々。その中でも牛島は痛そうなほど拳を握り締めながら、声を上げることもなく俯いていた。
……若………ありがとう。
スゲェ楽しかった。
お前のお陰で久々に本気でバレーやれたよ。
心の中で呟いた言葉が届いたのか俯いていた牛島の顔が上がり、視線が重なった。
たった数秒間見つめ合っていただけだったが、伝わってくる想いに胸が熱くなって。
「悠~~~!ヒーローインタビューに俺と悠がご指名だって!さ、行こ行こ♪」
「えー……めんどいよ。お前だけ行けって。」
「ダーメ!!一緒に行くんだよ!………それに、お前は青城(うち)の"ヒーロー"なんだから♪」
「____っ!」
及川にぐい、と腕を引かれインタビュアーの待つ場所へと向かう中、俺は及川の言葉によって再び目頭に涙が込み上げてきたのを必死に押さえ込んでいた。そんな俺の様子に気づいてるであろう及川はご機嫌にニコニコと笑みを浮かべている。
………くそ。本っ当ムカつく。
付き合いが長いとこれだから困る。
とりあえず、あとで1発殴っておくか←
「___それでは、インターハイ予選宮城県地区大会のMVPに輝かれました銀鏡悠くんのヒーローインタビューです!銀鏡くん、どうぞっ!」
とん、と及川に背中を押され俺はシャッターの光が飛び交う中、ゆっくりと口を開いた___
___Onward.