第10章 最大の好敵手
ズガンッ__!
「___ぐっ!」
ブロックに飛んでいた白鳥沢の12番の腕を吹き飛ばし、連続7本目となるスパイクが決まる。
「………次。徹、もっと高くできるか?」
「高く、ね。うん、任せて♪」
自分の中の勝負に飢えた獣が解放された俺は貪欲にボールを追っては相手コートにブチ込むことだけを考えていた。
そんな俺の様子を楽しそうに見つめる及川は何も言わずとも俺を極限まで良いコンディションまで引き上げては、俺好みのトスを届けてくれている。
今まで才能溢れるセッターたちのトスを打ってきたが、及川のソレは別格とすら感じられるほどであった。………離れていた時間等なかったかのように俺を分かりきっているトスは俺を安心させ、更なる高みへと連れていってくれるような気がしてくる。
楽しい………
ふわりと上げられたトスは指示通り俺の求める高さに届けられ、いつにも増してノッている俺は腕を振り下ろし掌でボールを捕らえた。
目の前に広がる光景は動きを止め、白鳥沢の選手それぞれが何をしようとしているか全て伝わってくる。俺の正面のでロックに飛んでいる牛島の瞳に俺が映っているのが分かり、俺は視線を逸らさぬまま手首をそっと捻った。
「なっ__!?超インナーだと!?」
ブロックにかすることすらないまま、ほぼネット沿いに鋭利な弾道で床へと叩きつけられたボールに反応すらできなかった白鳥沢の面々。
ピーーーっ!
すぐに白鳥沢サイドからタイムアウトの要請が入る。既に独壇場となりつつあった俺の集中を切らすことが目的であろうが、悪いけど場数をそれなりに踏んでいる俺にとっては大した問題ではないのだ。
「悠~~!超キレッキレだねぇ♪見ててゾクゾクするよっ」
いつものように飛び付いてきた及川と、その逆の位置から俺の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でる岩泉。
「おっまえ、超格好ぇなっ!!あの白鳥沢相手にあと4点で勝ちだ!このまま一気にいくぞ!」
「ああ、勝つよ!……あと3点は必ず俺が取るから、最後の1点はお前が決めてくれよ。一!」
俺の言葉に岩泉の眼が一瞬見開かれるが、すぐにニッと笑顔になって
「………オオッ!決めてみせるぜ、……必ず!」
合わせた拳に思いを乗せて、試合開始の笛の音が再び俺たちを熱き舞台へと呼び戻す。
___buddy.