第10章 最大の好敵手
「お前のプレーに痺れたよ。……そろそろ俺も飛ぶぜ?」
「……///!よ~しっそろそろ作戦Bかましちゃおっか♪」
掌を返すように変わった及川の態度にくくっと小さく笑いながらも俺は肩を回し、集中力を高めていく。
「……なぁ、作戦Bって?」
「………ごめん今名前つけた。」
___岩泉の及川に負けじとも劣らない派手なサーブは低い弾道を通り、ネットに当たると急激に球速を弱め、コロリと白鳥沢コートへ落ちる。
きっと岩泉としては危うくアウトになるところだったため、さぞかしホッとしたことだろう。
そんな意図せず生まれたボールを慌てて走り込み見事カバーしてみせる白鳥沢のセッター。
「すんませんっ!カバーッ」
「オーライ!」
高く上がったボールを3番が丁寧にレシーブであげる。さすがは王者と呼ばれるチームなだけあって、多少崩れたところですぐに立て直してしまう。
………若が言っていた豊かな土壌ってやつで鍛えられた面々は伊達じゃないってか。
ま、関係ねぇけど。
「ラストッ牛島っ!」
3番からのレシーブで上がったボールを牛島がバックアタックに飛ぶ。
「悠っ!」
くい、とひっぱられ、及川がストレートと踏んだことが伝わる。……だが、俺の野生の勘は"違う"と警鐘を鳴らす。
俺とのマッチアップでアイツがフェイントを入れてくるとは思えない。だとしたらクロスかインナーか___
しかし、俺の予想を反して牛島はフェイントで返してきて
「なっ!?」
岩泉と金田一、渡が駆け寄るものの牛島の予想外のフェイントに間に合うことなくボールは床へと落ちた。
ワァ__!
白鳥沢サイドの応援が沸き立つ中、こちらを静かに見つめる牛島と目が合う。
__瞬間、体の中がザワ、と落ち着きをなくす。
「……ははっさすがに本気の俺相手じゃ形振り構ってられねぇってか?」
「……本気のお前相手に体裁に拘るなどお前に失礼だろう。……だから、お前も早くその牙を見せてみろ。いつまで焦らすつもりだ。」
牛島の言葉に一瞬目を見開くと、すぐにニィと口角を上げ挑戦的な笑みを返す。
「………言われるまでもねぇよ。若、今の言葉。後悔すんぞ?」
__Battle of earnest and serious.