第10章 最大の好敵手
【 白鳥沢side 】
「う、牛島さんっ流石……で……す……。」
ハッとし、慌てて伝えた言葉はギロリと向けられた鋭い視線によって尻窄みしていく。
「………勝つのは誰だ?」
突然の牛島の言葉唖然とする遊佐たち。
「もう一度問う。………勝つのは誰だ、と聞いている。」
見つめる先の牛島は無表情ではあるが見えずともその内心は鬼気迫るものだと伺える。
ハッとしたように口を開いた遊佐は、牛島の求める答えを告げた。
「___白鳥沢(俺たち)です!!」
牛島は遊佐の答えに静かに頷きを返す。
そして、ゆっくりとチームメイトたちを見回すと、すぅ、と息を吸った。
「……奴は……悠は強い。………だが、勝つのは白鳥沢だ。忘れるな。俺たちに"敗北"は無用であると。」
「「「「「____っはいっ!」」」」」
折れかけていた心は牛島の言葉により再起する。
本当は誰よりも牛島自身が悠の圧倒的な実力を前に、勝利したい気持ちと負ける悠の姿を見たくない気持ちが入り交じり、複雑な心中であったが、その思いを他の選手たちに気づかれないよう、自分に向けて放った言葉に自分自身も奮いたたせて。
___そう。白鳥沢は"絶対王者"なのだと。
すでに第2セットも青城優勢なまま、得点板には12-5の数字が並んでいる。
サーブは門林がフローターサーブを打つが、届いた先が悪く、悠によってあっさりと拾われ及川へと返された。
(前衛は岩泉と松川。銀鏡はモーションに入っていないからない__)
遊佐が思考を巡らせている間、トスをあげようと飛んだ及川の口角が少しだけ上がるが、遊佐は気づけない。
「___遊佐っ!」
呼ばれた時にはすでに遅く。
遊佐の考察を嘲笑うかのように決まった及川のツーアタック。このタイミングでのツーは選択肢になかった白鳥沢の一同は皆一様に悔しさを露にし、及川の肝の座りっぷりに苛立ちを覚えた。
____Cheer up.