第10章 最大の好敵手
【 白鳥沢side 】
第2セット___
*白鳥沢オーダー:1番牛島(WS)、2番甲斐(MB)、9番遊佐(S)、4番門林(WS)、12番谷田部(MB)/6番嶋(Li) 、3番江藤(WS)
江藤のサーブは際どいコースを狙ったにもかかわらず青城の花巻によって拾われた後、岩泉のブロックアウトにより失点から始まった。
第1セット終了後、ただならぬ空気になっていた白鳥沢サイドは、牛島から溢れ出る殺気に息が詰まる思いをしていた。
今まで経験をしたことのない自分達に不利な試合運びに動揺を隠せないメンバーたち。
………とりわけ、牛島や江藤のような攻撃性の高いメンバーは苛立ちを露にし、チーム内の緊張感を高めていた。
ただ、明らかなことは今まで自分達が相手にしていた青城と今の青城とでは全くベツモノであること。
ただ一人、"銀鏡悠"という選手が加わっただけで、そのチームは全く違う色を見せている。
攻撃力はさることながら、守備力まで今までが比ではないほど上がっており、わが校率いる日本で3本の指に入るとも言われる大エース牛島のスパイクでさえも、悠の手にかかればいとも簡単に止められてしまう。
成す術を無くしつつある現状は選手たちの心の中に自分達が敗北するイメージがくすぶり始めていた。
___ズガンッ
目の前ではまたしても牛島と甲斐が悠の囮に振り回され、松川のクロスを遊佐がシングルでブロックに飛び、またしてもブロックアウトという失点を重ねた。
「っくそ……!」
白鳥沢のセッターである遊佐は自分を含め選手たちの動きに鈍さを感じ始めていた。恐らくその原因は既に頭から取り払うことが出来なくなりつつある"負け"の二文字。じわりじわりと広がっていくソレは、遊佐たちの全身に重りのようにのし掛かり呼吸すらも苦しくさせていく。
「………遊佐、」
名前を呼ばれハッとする。無意識に上げていたトスは我らが絶対王者の代名詞とも呼べる男。
ズア、と大きな体で空へと飛ぶと、自分が上げたトスを物凄い威力で打ち付ける。
ド、ゴン
ブロックに飛んでいた金田一の腕をぶっ飛ばし、決まったストレート。呆然としたまま、すげぇ、
と思わず漏らした言葉にピクリと反応する牛島。
___The negative to cause image.