第10章 最大の好敵手
まんまとこちらの策略に嵌まった白鳥沢は、俺が囮の可能性もあることを選択肢に入れつつも、俺をブロックするには牛島が必ず必要となるため、戦力が分散され、青城ペースに乗せられたまま出口を見出だせずにいた。
そして、第1セットもあと1点となり__
「___ワンタッチ!」
「っくそ!」
岩泉のスパイクを白鳥沢の2番がうまいことワンタッチで処理し、レシーブからセッターへと戻ったボールは勿論ヤツの元へと集まるわけで。
「寄越せっ!」
「ハイッ!」
牛島のコールに瞬時に対応した白鳥沢のセッターが、ふわりと牛島の好むやや高め弧を描くのトスを上げると、直ぐ様ネットの向こうに現れる東北エリア最強の白鳥沢の代名詞と呼べる男の姿。
ギュッキュ__
床からの反動を感じながら踏み切り、ネットの上から腕を伸ばす。
ドゴッ___ガッ
………キュ
『ックソォッッ!!』
牛島の声が館内に轟く。
俺は視線を向けぬまま、口角だけをそっと上げ、ほくそ笑む。
「悠~~~っ!!」
「ウオオオ!!」
飛び付いてきた及川と岩泉。
続いて駆け寄ってくる花巻たち他のメンバー。
みんなの笑顔を見ながら、このチームに自分が役立てたことを嬉しく思う。
一緒に喜べるつていいな、なんて思わず胸が熱くなって。
__でも、まだこんなもんじゃないよ?
ピーーーッ
笛の音が第1セットの終了を告げる。
"25-19"
青葉城西が第1セットを先取し、コートチェンジを行うべく、控えの選手たちが荷物をまとめている間に、俺たちは水分補給と流れる汗の処理をしていた。
「__しっかし、お前よく一人であのウシワカの超強打ブロック出来んね。………あれ、威力半端ねぇし、腕固定すんのもキツいしさ。」
「あ~……慣れってやつ?一応俺、世界選抜メンバーだしね。」
「………そうだった。殆ど毎日一緒にいるから忘れてたけどお前マジでスゲェヤツだったわ。」
花巻と松川と話していると、ドン、と背中に衝撃を感じ、ふらついた体を足で踏ん張り支える。
振り返るとそこにいたのは及川___ではなく、まさかの国見で。
「うおぅっ!?ちょ、英っどうしたよ?」
未だに国見のこの変貌っぷりに慣れない俺は動揺を隠せぬまま、固まっていた。
__A moment of the temporary.