第10章 最大の好敵手
__やはり、クロス!
床を蹴りネットの上へと腕を伸ばすと、読み通りのコースに打ち込まれたボールが俺の腕に当たる。触れた瞬間、腕の力を緩めボールを自陣へと高く上がるよういなす。
「____なっ!」
悔しそうな白鳥沢の3番。
俺相手に強打を打ち込もうとは10年早ぇよ。
「ナイスワンタッチ!悠っ………金田一カバーっ!」
「ハイッ!」
及川にボールが渡るのと同時に一斉に走り出した岩泉、花巻、俺の3人。
キュ、キュキュッ
「__ライトッ!」
手を挙げトスを呼ぶフリをする。
その声にピクリと反応を示す及川の視線が俺へ向けられると、直ぐ様反応する牛島と白鳥沢の2番(MB)。
やつらの顔は揃って俺へと向けられ、その頭には俺の本気スパイクを如何に止めてやるかと言うことしか無いかのような顔つきで。
くく、と内心でほくそ笑みつつも、ポーカーフェイスを決め込み、ネットの遥か上へと跳ね上がる。
ギュキュッ
俺のジャンプに合わせ牛島と2番が俺の正面へとジャンプモーションに入った次の瞬間
___キュッ ドガンっ!
「____なっ!?」
及川の手からふわっと上がったトスは、俺ではなく、バックアタックに飛んでいた岩泉の掌に捕らえられ、次の瞬間には白鳥沢のコートへと打ち付けられていた。
固まる白鳥沢メンバーを他所に、俺は岩泉に駆け寄りハイタッチを決める。
「っしゃあ!見たか悠っ!」
「ナイスキー!見た見た。くくっ……いい面拝めたよ、全く。」
「だな!スパイク決まって今までで一番スカッとしたぜ!」
「岩ちゃ~~ん!ナイスキー!!さっすがぁ俺と息ピッタリ☆」
バタバタと音をたて登場した我らがウザさの極みとも言える主将こと及川くん。つい先程までご機嫌だった岩泉の眉間に深く刻まれたシワに彼の苛立ちの度合いが見てとれる。
「っるせぇ!!今の低かったぞ!ちゃんと仕事しろっアホ川っ!!」
「そう?ごめんね、岩ちゃん多少低くても打ってくれるし。………それに短気じゃなおモテないよ?ね、悠?」
岩泉のお怒りモードを察した及川がさっと俺の後ろへと隠れ、いつものように俺を巻き込もうとするが、今日の俺はひと味違うのだ。
____Gamesmanship.