第3章 帝王
「____っドワァ!?」
弾かれたように抱きついてきた及川。
本当、スキンシップ激しすぎるよ、このアホ川さん。
「銀鏡、すげーよ!!半端ねぇな!!」
「生で見るととんでもない迫力だな!身震いしてしまったよ。」
「まじ、どーやったの!?見えなくなるとか信じらんないんだけど。」
次々に降ってくる賞賛の声。
なんか、ちょっと、恥ずいかも。
ゆっくりと歩み寄ってくる岩泉。
その口許は弧を描いていて、挑戦的な笑みを浮かべている。
俺はスッと手を挙げ、岩泉を見つめる。
「………お気に召しましたか?エース様。」
ニヤリと笑うと、岩泉も手を挙げた。
「……あぁ。悪くねぇよ。」
バチンッ
二人の掌が当たり、景気の良い音が体育館に響く。
こいつとこうしてハイタッチするのは悪くない。
むしろ、これからはこれが普通になるんだな、なんて思ったらちょっと嬉しくなったり。
「……ま、本気どころか5割程度であれっつーのは、腹立つけどな!!………よし、悠一発殴らせろ。」
真顔で近づいてくる岩泉に、危機感を覚えた俺は、未だ抱きついたままの及川を、ずい、と岩泉に差し出した。
「ありがとう!徹っ!身代わりサンキュッ☆」
「えっ!?み、身代わりって…!?なっ、い、岩ちゃん!?顔マジだから………ちょ、構えないでーーーっ!!」
「そうか。こいつを殴ればいいんだな?悠?」
ギロリと向けられた殺人犯のような鋭利な視線に、俺は笑顔で頷き、手を差し出した。
_____どうぞ、 と。
「………わかった。おい、及川、歯ぁ食いしばれ……」
「ムリムリムリムリムリーーーーーーぎゃんっ!?」
お、マジでいったよ?!
及川、頭押さえてうずくまってるし……
もう、あいつ死んだんじゃねぇ?
今までありがとう、友よ………あ、息してらぁ。ちぇ←
……つか、そんなに怒らせちゃったの、俺。
怖い怖い、あの人本当に怖い人!及川を見下ろしてる顔、超怖い!
____Whip of love.