第10章 最大の好敵手
【 及川side 】
ウシワカがスパイクモーションに入ったのを確認し、ブロックに飛ぶべく上体を沈ませる。
隣にいる悠はウシワカから視線を外すことなくタイミングを図っているようだが、その体は未だ踏み込みの体勢には入っていない。
疑問を抱くもののウシカワの体が既に跳ね上がっていたため、自分も床を蹴りジャンプをした。
ギュッ
___!?
つい先程までジャンプモーションの気配すら出さずにいた悠の顔が、気がついたときには自分より高い位置で跳んでいて。
ヒュン、と音を鳴らして振り下ろされたウシカワの腕は前方へ向いている。
(___ストレート!
___なっ!?)
ボールに触れる瞬間にくい、と捻られた腕。
「っ……くっ!」
ストレートから咄嗟のクロス打ちへ変えられた軌道は他の選手のものならばカバー出来るが、目の前に対峙するは日本で3本指に入るスパイカーで。悔しいかな追い付かない体がそれでも食らいつこうと腕を左側へと伸ばす____
バチィッ
ボールが腕に当たった衝撃音。
「___っ!」
見事にコースを掴んでいた悠の腕がウシワカの強打に弾かれることなく、ドシャットを決めた。
___ゾクゾクッ
明らかに今のウシワカのスパイクの威力は全力のもので、俺らでさえドシャットを決められることは残念ながら多くはない。その超強打を直前の__しかもほとんどモーションがない軌道変更にもばっちり合わせてきた悠の凄さに鳥肌がたってしまう。
当の本人はというと、やや上から見下ろすように挑発的な笑みをウシワカに向けていて、ネットの向こうのウシワカなんてこめかみに青筋が浮かぶほど熱くなっている始末。
___Masterpiece.