第10章 最大の好敵手
高まる衝動を抑えるべく、ふぅ、と小さく息を吐く。
視線の先、ネットの向こうでは、同じように牛島が俺を見つめていた。
「……… 悠。この試合で白鳥沢が勝ったときはお前はうちに来てもらう。悪いが、俺(白鳥沢)は負けない。」
「ははっ……いいね!嫌いじゃないよ、そういうの。……でも勝つのは青城(俺達)だ。」
ギロリと睨み付けてくる殺気立った視線を受けながら、斜め上から見下ろすように挑戦的な笑みを返すと、牛島のこめかみがピクリと動いた。
挑発は上々の結果。
牛島はきっと俺とのマッチアップを狙っている。そして、今は二人とも前衛なわけだ。
___いっちょ、若の仏頂面、歪めてみますか。
再開した試合は、及川のサーブから始まり、及川の高速サーブをもってしても"絶対王者"が崩れることはなく、レシーブは乱れたもののきっちりカバーしてくる白鳥沢のセッター。
同時にスパイクモーションに入る牛島をきっちり視界に納めながら、一応他の選手の動きも確認するが、動く気配はない。
………囮すらつける必要ないってか。
若が決めて当然、って感じだな。
キュ、 キュギュッ
牛島の体が沈む。
ギュキュッ
そして俺の体も同時に深く沈んで。
___Provocation.