第10章 最大の好敵手
キュ____
タイムアウトが終わり、再びコートへと足を踏み入れると途端に自分に襲いかかる強い衝動。
"ボールに触りたい"
"強打を止めたい"
"サーブを打ちたい"
"スパイクを打ちたい"
おっと、最後の1つは我慢だな。
………その我慢が一番しんどいけどね。
そんなことを考えていたら、とん、と叩かれた背中。振り返るとムカつくイケメンスマイルの及川がいて。
「………ウシワカの攻撃を翻弄しようよ。」
「いいね。やっちまおーぜ?」
二人して悪巧みな笑顔で笑い合う。
だが、次の瞬間にはそれぞれがピリッとした空気感をまとい、ネットの先、牛島を見つめる。
………守備に徹するのは何年ぶりだろうか。
いつからかスーパーエースという攻撃専門のポジションが定位置になり、練習以外で守備をやらせてもらえる機会がなくなって。
別に嫌いな訳じゃないんだ。
ただそれ以上にスパイクを打つことが好きなだけで。
だってさ、俺は知ってしまったんだよ。
スパイクを打つときに、手に吸い付くように現れるトスを掌で打ち付ける感覚も、強いブロックを打ち破る快感を。
スパイクに関わるすべての動きは俺の全身に血を巡らせ、ひどく興奮させられるんだ。
___Excitement、