第10章 最大の好敵手
キュキュ
降り立ち、ネットを向こうを見ると悔しそうに顔を歪める牛島の姿。
「悠っ!!すんごいね!キレッキレの超インナー!」
「何だお前!凄すぎだべ!」
一瞬その姿を視界に納めた俺だったが、すぐに飛び付いてきた及川や岩泉へと意識を戻し、笑顔を作った。
その背中を見る男には気づかずに___
俺が後衛にいる間、攻撃は前衛にいる岩泉や金田一、花巻らが白鳥沢相手にギリギリの攻防戦を繰り広げていたが、"ここ一番"という場面では必ず牛島の超強打が決まり、やはり青城にとっての最大の難関は"牛島若利"という男なのだと嫌でも分からせられ、内心舌打ちをする俺。
………チッ。
俺が後衛だからって調子乗りやがって……。
ここは一発、代表の主将としてきっちりサーブカットしてあげようかね。
白鳥沢側のエンドラインの先にいるのは牛島で。
真っ直ぐに俺を見つめてくる殺気立った眼差しは、牽制の意味など持たず、ただ俺を楽しませるだけ。
キュキュ、
ドカッ
降り下ろされた手から放たれたサーブは、凄いスピードでこちらに飛んでくる。
____!………いいね。俺狙い……!
ギュアと轟音を轟かせ、風を切るボールが俺の構えた先へとぶつかる。
及川のサーブと同等の超強打が与える腕への衝撃は大きいのだが___
トッ……
球速が弱まり、なだらかに上がったボールは緩やかに弧を描く。
「ナイスレシーブ!悠っ」
岩泉の声に視線を向けると、岩泉が小さく頷きスパイクモーションに入る。
___ちゃんと見てろ、ってとこかな。
……頼むよ。相棒……!
ぐん、と後ろに引かれた岩泉の腕が振り下ろされ、ボールを捉える。ドカッ、という音ともにボールは相手のブロックへ当たるとそのままサイドラインの外へと落下した。
「___ブロックアウトッ!ナイス、一っ!」
降り立った岩泉にハイタッチを求め、手を上げるとニカッと豪快な笑顔で手が重なり音をたてる。
____Repayment.