第10章 最大の好敵手
【 岩泉side 】
ピッ___
笛の音ともに得点番が捲られ、8点目となるサービスエースが決まる。あの白鳥沢が触ることで精一杯な姿に内心焦りすら感じてしまう。
当の悠は目をギラつかせて、獲物を前にした獅子のようにネットの向こうに視線を向けていて。
その手から放たれるサーブは、アイツのスパイク同様に腕が降り下ろされる瞬間は速すぎて見ることすら出来ない。
これが………悠の真の実力___
ただ、本気とはいえ悠が全力を出しきっている訳ではなさそうで、今も超高速サーブを打とうと助走をつけている姿は少し余裕すら感じられる。
ドガッ
__ギュルルッ!
「____なっ!?」
放たれたボールは急回転をかけ、白鳥沢のコート前方へと急下降するように落下した。強打対策としてコート後方へと下がっていた白鳥沢メンバーは触れど上げることは出来ずに、9回目となる青城への加点を許した。
何だあのサーブ____!?
悠の打った見たことのないサーブ。
空中で突然の軌道が変わったように見えたそれは、俺たちを含む全ての選手に動揺を与えた。
圧倒的な実力の差を前に、震えすら感じるほどで、悠が遠くの存在のように感じられる。
いつの間にか遥か遠くに行っちまったんだな__
「___岩ちゃんっ!」
__Distance.