第10章 最大の好敵手
エンドラインより遥か後方に立つと、1度だけボールをシュルと回し、感触を馴染ませる。
深く息を吸い、フーと長く息を吐く。
トッ
高く上がったサーブトス。
ギュ、キュ
床を蹴る感触が全身へと伝わってくる。
最大限に踏み込み、飛ぶと高い位置で俺を待つボールが徐々に近づいてくる。
もっと速く、高く___
ゴッ
掌がボールの反発を感じる間もなく放たれたサーブはギュオ、と音を立て風をきる。
____ダンッ!
コート上の選手たちの視線が追い付くことのないまま、白鳥沢コートへと落ちたボール。
「____っ!?」
唖然としたまま動けない白鳥沢メンバーを余所に牛島だけはネット越しにギラリと鋭い視線を向けていて。
「___何をしている!!アイツの強さは承知の上だろう!?なりふり構わず取りに行け!!……それが出来ないならベンチへ下がれ!」
白鳥沢の主将である牛島の叱咤が響く中、
「………はは。」
思わず溢れた笑いと、自然に上がった口角。
「ナイッサー!!……っ!?」
ギラギラと光る俺の瞳は野性動物が獲物を刈ろうと狙う眼で。及川は全身が震えるほどだった。
__Seriousness.