第10章 最大の好敵手
「…………で、何なんだ?話って____」
ダンッという音とともに俺の顔の横にある壁に牛島の手が突かれた。その状況に驚いた俺はいい始めた言葉を途中で止め、思考を巡らせる。
………え?
ちょ、これって………いわゆるアレなんじゃないのか?
よく女の子たちが騒いでる"壁ドン"ってやつだよな!?
焦る俺と対照に至極真面目な顔でじっと見つめてくる牛島に内心冷や汗が流れてしまう。
オイオイオイ……!
わ、若の顔、超マジなんだけど!?
………何この状況。
全くときめかねぇって………!!←
顔の両端を牛島の腕に挟まれ混乱中の俺を余所に、すぐ目の前にある牛島の口がゆっくりと開かれる。
「…………悠、やはりお前は白鳥沢に来るべきだった。」
牛島から幾度となく聞かされていた言葉。呆れた俺は、はあ、とため息を吐くと後頭部を掻きながら言葉を返す。
「………またそれかよ。いい加減しつけぇって。………いいの、俺は青城で。じゃなきゃ、お前やサクとマッチアップ出来ねぇだろ?」
俺の言葉に牛島の眉間に皺が寄せられていく。
「井闥山のサクサか……あいつもお前が白鳥沢や井闥山に入らなかったことを怒っていた。……お前は間違いなく日本で……いや、世界で1番のアタッカーだ。だからこそ設備の整った豊かな土壌でその才能を高めていくべきだ。今からでも__「若。」………何だ?」
饒舌に話す牛島の言葉を遮ると、真っ直ぐにその目を見つめ返す。
「………悪いが俺は例え青城がお前の言う豊かな土壌じゃなかったとしても関係ねぇよ。青城にいることで俺が弱くなることはない。………ウチは負けねぇよ。…………お前らにも、何処にもな。」
「……… 悠。そんなにも…………アイツらが大事なのか?及川は確かに優秀な選手だ。だが、岩泉はお前の足元にも及ばない程度だろう。……いずれにせよ、お前の足枷にしかならん。」
牛島は決して嫌みな奴ではない。ただ牛島の俺に対する執着心は強く、それが原因であることもわかっている。
………でも俺は牛島の言葉を受け流せずに身体中に怒りの感情が沸き上がってくる感覚を覚えていて。痛いほど強く握った拳は震えていた。
そして、次の瞬間___
「___っ!」
____The soil.