第10章 最大の好敵手
インターハイ予選3日目の朝、
俺は当然のごとく泊まっていた俺の幼馴染み2人とともに集合場所の学校へと向かっていた。
今日は朝から調子がよく、ロードワークである10㎞の早朝ランニングもいつもより体が軽く感じられ、良いコンディションに仕上がっているように思う。
「………いよいよだな。」
様々な思いが錯綜しているのか眉間に皺を寄せ複雑そうな表情を見せる岩泉。
「今日こそあの余裕ぶった仏頂面を歪めてやるんだから!飛んでよ?悠っ岩ちゃんっ!」
既に目をギラつかせ、鼻息荒い様子の及川が俺と岩泉の間に入り、それぞれの肩に腕を乗せた。
少しだけ震えていたその腕は、及川が不安と期待に揺れているのを感じさせて。
「………俺、今日始めっから本気でいくから。良いトス上げろよ?………徹。」
「もっちろん!及川さんが悠を一番気持ち良く飛ばせてあげるからね♪あっ悠が本気モードだからって岩ちゃんサボっちゃだめだよ?!」
及川の言葉に岩泉のこめかみにピキリと青筋が立った。
「……………うぜぇな、クソ及川。……サボるわきゃねぇだろーが!!ドアホっ!!」
「なっ!冗談だっ___ンギャッ!」
ゴッ、という重い音を響かせながら振り下ろされた岩泉の拳が及川の脳天を捉え衝撃を与える。
他人事ではあるがすぐとなりにいた俺までも背筋に冷や汗が流れたのを感じるほど、岩泉の迫力はいつもながら半端じゃない。
でも、このやり取りの後から二人の表情がいつもの感じに戻っていて、二人が緊張していたことを俺は改めて感じさせられていた。
きっと、それほどコイツらにとって、若__白鳥沢の存在はでかいんだろーな、と考えている内に、いつの間にか学校に辿り着いた俺たちは、会場へと向かうバスへと乗り込んだ。
___インターハイ予選が始まってから三度目となる仙台市総合体育館に辿り着くと、俺と及川たちは用を済ませるべくトイレへと向かう。
すると、行く先の壁にもたれかかるように立っている一人の男の姿が視界に入る。
「____あ。」
思わず足を止め声を漏らした俺に、及川と岩泉が不思議そうな表情を示すが、俺の視線の先にいた存在に気付くとすぐにその顔を歪めた。
__Existence of the natural enemy.