第9章 初陣
その後及川の口から語られていたのは、影山が"独裁の王様"からチームプレーを尊重できる"マトモな王様"に変わろうとしているという内容で。
昔の影山を知らない俺だったが、影山のバレーへの熱意に触れた自分は影山が何故孤軍奮闘していたのかわかるような気がした。
きっと、自分の突出し過ぎた技術に周りが追い付かなかったのだろうと。
そして影山自身も、その技術を活かして周りをうまく引き込んでいくことも出来なかったのだろう。
……少しだけ、分からなくもない。形は違えど、自分も孤軍奮闘していたわけだから。
「……あの影山が今やっと他人への信頼を覚え始めたってわけか……」
岩泉の言葉に眉間に皺を寄せ、険しい顔つきになる及川。
「厄介この上ないよねぇ……」
……しばし思い詰めたような表情を見せる二人の姿に、俺はふぅ、と息を吐くと、勢い良く二人の肩に自らの腕を乗せた。
「__わっ悠!?」
「__うお!?」
驚き目を見開いた二人の顔が俺に向けられていて
「厄介上等だろーが!影山も若も他の全国の強豪たちも皆、厄介者だろう?………俺らはソイツら全部ぶっ潰して進んでくんだよ。…………それとも、徹と一はビビってんのかい?」
ニカッと笑って見せると驚いていた二人の顔に赤みが差し、二人揃って"違うっ!"と大声をあげた。
そんな二人が可笑しくて思わず吹き出す俺に抗議の声の猛追があったのは言うまでもないこと。
「大丈夫。俺は青城の楯となり剣となるよ。厄介者だって何だって全部引っくるめて俺とお前らで喰らい尽くしてやろうぜ!」
「おぅ!早くウシワカの泣きっ面を拝みたいぜ。」
「うんうん、俺たちで喰っちゃおう♪決勝でウシワカに勝ったら"強い方が勝つのは当たり前だよね?"って言ってやるんだ~!ふふっ今からウシワカのカチンと来た顔見るのが楽しみだなぁ☆」
至極楽しそうに話す及川の姿にドン引きした俺と岩泉がお互いを見合わすと、二人して、はぁー、と盛大にため息をついた。
「「お前、本当に性格悪いよな。」」
またしても重なった言葉に、及川が反発してくるものの俺の相棒、岩泉の蹴りがズドンと決まり、強制的に黙らされるという形で終結を迎えた。
___I run through it.