第9章 初陣
「マジで捉えてんじゃねぇよ!アホ川っ!!んなわけねーだろ。」
「…………!……やっぱり………やっぱり悠が俺のこと嫌いなはずないもんね!!むしろ大好きすぎるぐらいでしょ?!及川さん、知ってるんだからね☆…さ、整列行こう~♪」
先程までの落ち込みっぷりは何だったのかと思うほど、ケロッと機嫌を直し、それどころかウザさ倍増で戻ってきた及川に衝動的に殴りそうになった自分をギリギリのところで抑え込む。
「…………。」
「ほらほら!悠ってば急いで~!」
………何だ。
本気で返してバカみてぇだな俺。
………でも、おかげで俺の心は決まったよ。
とりあえず、あとで3回は本気で殴ろう(左手)と。←
『『ありがとうございましたぁっ!!!』』
勝った青城は少しの時間をおいてすぐに準々決勝の試合があるため、俺たちは着替えをすべくコート外へと向かう。
………その間、1度だけ後ろを振り返ると、悔しげに顔を歪めた烏野メンバーが視界の端に映りこんだ。
ごめんな。
でも、楽しかったよ。
お前たちの本気、ちゃんと届いてた。
その思いを今度は俺たちが背負って、全国まで__
頂点まで持っていくから。
「おい!悠っ行くぞっ!」
岩泉の声に俺は一瞬だけ目を瞑り、ゆっくりと開く。
「………ああ。悪ぃ。」
再び岩泉らとともに別コートに移動をする。
勝負とは常に一方は希望を、そしてもう一方は絶望を抱いていくものだと。
だからこそ、勝った俺は常に前を向こうと。
いつも心に誓うんだ。
だからもう、後ろは振り返らないよ。
「___そういや徹、影山に『一人だけ巧くても勝てないんだよ。ドンマイ☆』って言ってやんじゃなかったっけ?」
着替えをしている最中、ふと試合前に及川が言っていたことを思いだし尋ねると、珍しく真剣な顔つきの及川が口を開く。
「………一人だけ強いワケじゃなかったじゃん。烏野は……」
「「お前メンドくせーな。」」
及川の言葉に声を揃えた俺と岩泉。
それに対し及川が、酷いな!と騒ぐが二人してさらっと無視を決め込んでいた。
「何なのさ二人とも!及川さん泣いちゃう!」
…………ま、これも無視だな。
____The winner always looks at the front.