第9章 初陣
しかし、俺の狙い処は決まっていて。
俺は今から狩ろうとしている獲物を見つめるかのように烏野のコートで目を輝かせている一人の小男に視線を向ける。
「…………じゃ、失敗しちゃった徹くんの挽回のために、俺様が本当の"お手本"を見せてやるかね。」
「おー。頼むぜ。うちのバカの失態のせいで、悪いな。」
「んなっ!?岩ちゃん本人の前で悪口言うのやめて!………でも、頼んだよ。悠」
自分を見つめる二人の瞳には、俺への信頼や応援気持ちが籠められていて、重なりあった視線は、俺の心を熱くする。
「悠っナイッサー!」
「ぶちかませー!」
「悠さんっ一本、ナイッサー!!」
次々とかかるチームメイトたちの声と熱い思いがビンビンと伝わってくる。
お前たちの想いに応えるから___
烏野には悪いけど、俺たちは先に行くよ。
手の中にあるボールをシュルリと回し、ダン、と一度だけ床を突く。
再びコートに視線を戻すと手元のボールを空へと放ち
キュ
眺めの助走から、エンドラインの手前のところで深くに体を沈ませ
キュ、ギギュ
ぐっと足の裏に力を入れて未だ高い位置にあるボールを目掛けて跳ね上がる体。
あっという間に追い付いた先のボールを最大限に後ろへと引いた左手が振り下ろされ、捉える。
____ドッ
ギュアッ
強い力の衝撃を湛えたボールが豪快な音をたて風を切る。
狙いの先、オレンジのユニフォームが俺のサーブを受けるべくレシーブの構えをとった。
「……………さて、どうかな?」
ドカッ
「_____うおっ!?」
強すぎるボールの勢いに上体を保てなくなり、よろついた西谷はそのまま尻餅をついてしまう。
西谷はしばらくの間、そのままの格好で固まっていたが、直ぐ様息を吹替えしたようにピョンと跳ねて起き上がると、目をキラキラとさせながら、うおおお!と雄叫びを揚げた。
西谷の様子に戸惑いを見せる烏野とは、真逆に青城メンバーは一様に口許を弛ませ、俺のサービスエースを喜んでくれて。
___I share joy together.