第9章 初陣
…………性格の悪い徹のやることだ。
狙いどころは、リベロってとこかね。
ド、カッ
豪快な音と共に放たれた豪速球は風を切り、俺の予想通りの進路をたどる。
すると、烏野のリベロの眼がギラリと光った。
及川のサーブがリベロの元へと届く手前のところで、軌道が少しズレるものの、烏野のリベロはそれにしっかりと反応すると勢いを弱めつつ、ボールを上げた。
「あいたー。やっぱ凄いなー。」
「何が"お手本"だ!普通に拾われてんじゃねーか!!」
「うへへ」
狙いの外れた及川が舌をぺろりとだしてウザったい表情を見せ、俺と岩泉をイラつかせていると、聞こえてきた声。
「来いやーー!」
ぴくりと反応した及川に、視線を送るとそれに気づいた及川の頭が小さく縦に振られた。
ネット前では金田一が影山の視線フェイクに見事に引っかかり、ブロックが追い付く間もなく影山と日向による神業速攻が決められてしまった。
「やっぱ凄ぇな。あのトス。」
「本っ当!あんな神業トス反則だよ。全く……って、悠!?もしかしてあのトス打ってみたいなんて思ってないでしょーね!?」
「…………思ったに決まってんだろ。バカかお前。」
「んなっ!?悠の浮気者っ!!」ゲーン
及川がまたしても影山のトスのことでぎゃあぎゃあと騒いでいると、申し訳なさそうな表情の金田一が近づいてきて影山のフェイクにつられたことを謝罪していたが、及川はムカつく言葉とともに金田一を励ましていて。
その及川の言葉かけの後に上がったトスは金田一が一番得意とする高さで上げられ、彼本来の力でスパイクを決めていた。
…………身内ながら徹の選手たちのプレーを最大限に引き出す巧さは感服だな。
ま、俺もアイツにうまく使われてるんだろーけどね。
なんて、他人事のように分析していると、視線の先の及川と一瞬目が合う。
その顔は謎が溶けたような満足げな笑みを湛えていて、俺は瞬時に及川がアノ事に気づいたことを感じ取った。
「…………うん。……悠が言ってた通りだね。」
___Quick-witted.