第9章 初陣
すぅ、と肺に息を送り込むと
間もなくして肺から取り込まれた酸素が、血管を巡り全身へと染み渡っていく。
あぁ………
やっと息が出来た。
俺の中にいる獰猛な獣は、コートの上でしか自由を得ることは出来ない。
さぁ、行こうか____
キュ、キュキュ
踏み出した足に床から伝わってくる反発を感じながら上体を深く沈めていく。
前衛の松川と岩泉がスパイクを打とうと跳ね上がる中、バックアタックの位置から床を強く踏み込み、
ギュ
飛ぶ_____
及川の手によってあげられたトスは、どのスパイカーに上げるトスよりも高く、速い。
ネットの向こうでは影山と田中、日向の3人がブロックをすべく壁を作るが、そんなことはどうでもよくて
最大限に後ろへと引いた腕をしならせながら、視界が捉えた先のスペースへとボールを撃ち込む____
ゴ、バァンッ!!
ブロックの遥か上から打ち込まれたスパイクは、誰の手にも触れることなく床を捉え、再び空へと跳んでいく。
手に残るビリビリとした感覚にゾワゾワと、全身が掻き立てられていく。
先程まで煩いほど感じられていた声援や歓声は消え、刹那の静寂が訪れるが、すぐにその静寂は破られ、先程よりも何倍も大きな音になって会場中を轟かせていった。
『『『ワァァァァァアアア!!!』』』
歓声が降ってくる中、ネットの向こうの澤村を見ると苦々しい笑顔をこちらに向けていて、俺はそれに対しニィと口角を上げ挑戦的な笑みを返す。
「悠~~♪ナイスキーッ!!及川さん、痺れちゃったよ☆」
飛び付いてきた及川を筆頭に次々と青城メンバーたちが声をかけてきた。
「さすが悠さんっ!!メッチャ格好イイっす!!」
「ナイスキー!悠~」
「うわ、会場中凄いことになってんじゃん。」
俺を囲む皆の眼は輝き、笑顔を向けてくれていて。
「___悠」
__Announcement.