第8章 開幕
____挨拶を済ませ、荷物をまとめて外に出たところ、ケーブルテレビの取材班に声をかけられた及川は意気揚々とインタビューに答えていた。
俺はというと、少し離れたところで岩泉とともに及川のイケメンスマイルを振り撒く姿にイライラを募らせ、金田一に怯えられていて。
すると
全く部外者のつもりで余裕ぶっていた俺に災難が降りかかる。
「あーーーっと!!貴方は噂の日本代表であり最強エース"銀鏡悠"君ではないですか!?ぜひっ一言お願いします!!」
すっかり油断していた俺は取材班のすごい勢いに圧され、何故か及川とセットで取材を受けるハメになってしまったのだった……
仙台市体育館から帰ってきた俺たちは、明日の試合についてのミーティングを行い、早めの解散となった。
いやぁ………
先程は実に散々な目に遭いましたよ………
ケーブルテレビの取材が終わったと思ったら、ファンと名乗る女の子たちに囲まれてさ……
この前の月刊バリボー効果なのかしらないけど、岩泉の言う通り、まさにサバンナで肉食動物の群れに囲まれた草食動物な感じでした………
終いには我先にと言い争いが始まる始末で
まさに____"戦場"
怖いし、もう忘れよう。………うん。
シャワーを浴び終え、更衣室で先程までのことを思いだし、げんなりしつつも着替えていると、岩泉の隣にいた及川が機嫌良さげに鼻歌を歌っていた。
「フンヌフーン♪」
「………おい、くれぐれも夜更かしなんかすんじゃねーぞ。」
「岩ちゃんは俺のお母ちゃんですか?」
及川の一言に一瞬にして鬼の形相へと変わる岩泉。
「…………あ?」
「ゴメンゴメンゴメン!しないしない!コンディション万全で行くって!!」
そして、岩泉の恐ろしさに怯えた及川が慌てたように謝罪をしていて。
俺は巻き込まれぬよう距離をとるべく、そっと荷物をまとめ、出口に向かうことにした。
____let sleeping dogs lie.