第8章 開幕
ヒヤリとする局面も起きることなく、まもなく2セット目も青城が勝利を納めようとしていた。
コートの外側には、先ほどから連続でサービスエースを決めている及川の姿。
「………王者も、ダークホースも、全部食って………全国に行くのは青城だよ。」
闘志に充ちた目で相手コートを見据えると、高らかにボールを上げ、助走の勢いのまま床を蹴り、天井へと向かい飛んでいく。
____ド 、ガンッ!
及川の手から放たれたボールは相手コートの選手の腕に当たりはしたが弾かれ、コートの外へと飛んでいった。
そんな及川の様子を見ながら、ボールに触りたい欲求と戦っていた俺は、そわそわする体を必死で抑え込んでいると、それに気づいたらしきコーチの溝口が俺の背中をポンと叩く。
「………お前って本当にバレーが好きなんだな。……今我慢した分、明日は好きなだけ暴れていいからよ。」
「…………もちろんっすよ。止められたって暴れますから。」
俺の中には勝負に飢える獣がいて。
早く早くと檻を出ようと暴れているんだ。
………全く、我ながら厄介なもん抱えてんなぁ…
そんなことを思っている間に、目の前の試合は青城が勝利し、終了していた。
「悠~~~~♪及川さんの大活躍ちゃんと見ててくれたぁ?」
無事に勝利を納め、満面の笑みでこちらに駆け寄ってこようとする及川を片手でシッシ、とあしらう俺。
「………うっせー。バカ川。さっさと、挨拶しにいくぞ。」
「んもぉ~~~悠ったら堅いんだから……。それに悪口略さないでよね!!」
そう言いつつも素直に俺の後を追い、整列しに戻る及川だった。←
___Inner fight.