第8章 開幕
NYでバレーをやっている間、対戦相手が戦意を喪失し、ブロックさえも手抜きになった試合を何度も経験してる。
ネットの向こうで士気の落ちた顔でただ試合が終わるのを待つだけの選手達を知っている。
もう嫌なんだよ。
見たくないんだ。
ただ、俺は熱の籠もった試合がしたいだけなんだ____
「____悠っ!」
突如名前を呼ばれ、ハッとした俺は意識をコートへ戻し、声の主を探す。
そこにいたのはエンドラインの外側で片手でボールを掴み、俺へと向けている及川の姿。
「今から、悠の大好きな及川さんが超超カッコいいサービスエースを決めるから、よーく見ててね?」
にっこりと向けてきた笑顔に、クスリともれる笑い。
「……バーカ。あほなこと言ってねぇで、きっちり決めて来い。」
「うん。まかせて!」
再びコートへと向き直った及川の背中を見つめながら、心の中で感謝を伝えて。
____ありがとな。徹。
きっと、俺が落ちてんのわかってたんだよな。お前。
___Bitter memory.