第3章 帝王
【 及川 side 】
"超高校級の中でも最強のアタッカー"
やっと帰ってきた幼馴染みはとんでもないことになってたわけで。
正直、すげぇっ!って気持ちと、なんか悔しい気持ちが入り交じってて。
とにかく生でそのスパイクを見なきゃ気が済まなくなって、無理矢理その機会を作ったんだけど。
「ねぇねぇ、悠~。渡っちはどこで構えればいいの~?」
コートの中で軽い準備運動をしている悠に、声をかけるとちらりと視線だけをこちらに向け、尚も平然とした顔で柔軟を続けている。
「あー……適当でいーよ。構えてるとこに打ち込むから。」
え、それってコントロールも相当自信ありってことなの?
……でも、まあ、そんぐらい出来なきゃ最強は語れないか。
「だってさ。渡っち。」
コートの向かいにいる渡は緊張した面持ちで、一番アタッカーが打ちやすい俺たちから見て右側に構えをとった。
その腕には厚手のサポーター。
つけとけって悠が言うから着けさせたけどさ。
んで、背後には吹っ飛んだ時に支える係として松川と金田一。………これも、一応ね。
もちろんトスあげは、セッターである俺。
今後の試合とかに生かせるように連携も見たいし。妥当でしょ?
さて、舞台は整ったよ?
ちらりと視線を送ると、手首を回しながら悠は、ニィと口角をあげた。
"まぁ、見てろよ"
そんな余裕たっぷりな顔で。
その目に射ぬかれると、全身が粟立つのを感じる。
ピリピリとしたいい緊張感。
「1回飛んでみてよ~。トスの高さ見たいしさ。」
「ん。わかった。」
少し後ろに下がる悠。
次の瞬間、
"キュ"
という地面を蹴る音がし、同時に聞こえた風を切る"ビュォッ"という音。
気がついたときには遥か頭上に跳ね上がったしなる体。
「……………すげぇ……」
誰かが漏らした言葉。
あっという間に飛び上がる瞬発力と、尋常じゃないくらい高い最高到達点に至るまでの速さは、目が追い付かないほどで。
_____Be amazed.