第8章 開幕
突如隣にいた及川の頭に凄い威力でぶつかってきたバレーボールが、弧を描き、持ち主の下へと帰っていく。
ちらりと視線を向けた先にいたのは、物凄い殺意の籠もった眼で俺らを見ている”青城の鬼”の姿。
……つ、つか、
今、ぎりぎり当たんなかったけど、多分2人とも狙ってたよね!?
あわよくば、俺にも当てようとしてたよね!?
サーーっという音と共に全身の血の気が引いていくのが分かり、瞬時に俺は及川の首根っこを掴み、踵を返す。
「もうっ監督にもぶたれたことないのにっ!!痛_____っ!」
文句を言いつつ振り返った及川は、岩泉を視界に捉えると、その殺気の籠った表情で"早く来い"と合図を送る姿にびくりと体を強ばらせた。
「………ごめんね。写真はまた今度。」
及川の言葉に落胆する女子達の声を背中に受けながら、俺と及川は尚も殺気を漂わせる岩泉の後ろをいそいそとついていく。
すると、前を歩いていた岩泉がちらりとこちらに視線を向けてきて、その恐ろしさから思わず顔をひきつらせていると、岩泉はフッと小さく笑いをこぼす。
「…………悠、何ビビってんだ?オメェは悪くねぇだろ。………寧ろハイエナが群れを成す中に丸腰のお前一人を行かせちまって悪かった。…………ま、全ての原因は、そのクズ川だがな。」
ギロリと向けられたその視線だけで人を殺せそうなほど、殺意の込められた視線を向けられた張本人である及川はさっと俺の後ろに隠れていて。
___だが、俺の相棒はそんなに甘いヤツではないのですよ。
徹くんよ…………。
俺が心の中で手を合わせていると、時同じくして岩泉の鉄拳が及川の頭頂部へと降り下ろされていた。
___Wonderful reunion.