第8章 開幕
【 及川side 】
_____数時間前
「___及川、ちょっといいか? 」
監督の声に振り返ると、手招きしている監督と目が合って
何ですか、と返事をし、近づくと神妙な表情で次の言葉を言い渋る監督の姿。
何故だろう………
さっきから、胸の辺りがざわついている。
____嫌な予感。
監督の口から発せられるであろう言葉が、何か嫌な内容な気がして、俺の脳からは"聞いてはいけない"という危険信号が絶えず鳴り響いていて。
「………実は明日からの公式戦だが、銀鏡は___」
"銀鏡"という言葉に
ドクン、
と跳ねる心臓。
嫌だ。
それ以上は聞きたくない。
やめろ。
やめてくれ。
俺の想いは届くことなく無情にも続けられた監督の言葉。
「"スーパーエース"ではなく、"WS"としてコートに立ってもらう。」
「_______っ」
頭のどこかでこうなることを予想していた俺。
それでも、実際に監督の口から聞くと、想像以上に俺の心に衝撃を与えた。
悠が"スーパーエース"ではなく"WS"になると言うことは、すなわち悠が守備にも入る、ということ。
つまり____
俺たちが力不足なために、
彼をスパイクだけに集中し、
"自由に飛ばせてあげられない"
ということ____
怒濤のように自分の中に押し寄せてくる2つの感情。
いっぱいの"ごめんね"
と
全国へと続く道が確実なモノへと変わる安心感と高揚
___Expectation and apology.