第6章 奇襲
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
どれほど圧倒的な力の差を見せつけられてもなお、1点でも点を取ろうと、俺のスパイクを止めてやろうと、食らいついてくる烏野メンバーたち。
諦めどころか更に闘志を燃やす姿に、俺は思わず顔が緩んでしまう。
いやぁ
思った以上に楽しい。
若みたいな強ぇ奴と打ち込みあいの試合すんのも大好きだけど、弱くても負けじと食らいついてくる奴とやんのもすげぇ楽しいんだよね。
今まで、何度も対戦相手の絶望の表情を見てきた俺は、負けてもなお自分に対し闘志の目を向けられることが嬉しいわけで。
こういう奴等に出会えると、バレー辞めてなくて良かったって思えるよ。本当にさ。
楽しい時間もあとわずか。
得点番が終わりまでのカウントダウンを続けている。
「あーぁ。あと5点で終わりかぁ。………ねぇ、孝支。楽しい時間って本当あっという間だよなぁ。」
烏野のサイドからチビッ子の打ったスパイクが、俺の構えた先に当たり、勢いを無くし、再び空へと舞い戻っていく。
「……だなっ!俺も、あと少しで終わりかと思うと、ちっと寂しいよ。……よっ、と!」
ふわりと上げられた高いトス。
そのボールが頂上へと辿り着いた時、俺の掌によってそいつは反対コートへと叩き込まれる。
ズドンッ
「うわぁっ!」
ブロックに飛んでいたチビッ子はスパイクの勢いに負け、体ごと後方へと吹き飛び、尻餅を着いていた。
「っ痛ぅ~~!………やっぱつえぇ!!スパイクすげえ!!~~~~~~ワクワクすんなっ!」
目を輝かせながら、ヒョイと勢いよく体を飛び起こしたチビッ子。
その目に宿る野生の鋭い闘争心が俺の体にチリチリと刺さる。
へぇ………
あのチビッ子……
いい眼をすんな……。
じゃ、特別に………
お前と影山の例の速攻。
俺が相手してやんよ。
____Wild.