第12章 【淡い夢】
シェリルside
* * * *
帰国すると、奴隷と成り果てて、衰弱している国民の姿があった。
素性を隠すために被っていた、黒いフードを捲ると、たくさんの視線が私に向けられた。
そして、滞在し…国民を奴隷として品定めしている、他国の人間を切りつけた。
(最後くらい、民を護ってみせる…っ)
「私の民に、家族に、汚らしい手で触れるなッ」
「貴様…っ、サラクの王族…シェリル王女かッ!!」
「汝、我の従者である。我が血をもって、その大いなる力を我に授けよッ」
自らの右手の甲に刃物を突きつけ、金属器『ブレスレット』を鮮血で染め上げる。
そして、大量の青いルフを影に取り込み、私は最大限まで力を引き出した。
「『サラク』は今日をもって…、滅びる」
「なんだと…?」
「みんな、ここから早く逃げなさいッ!!」
私はそう叫び、国民の両手足から自由を奪っていた鎖を、影で簡単に断ち切った。
それを見た警備の兵は、私を王族と知っていて、槍や剣を向ける。
指を鳴らし、逃げる民を追いかける兵の目の前に、影で創った壁を出現させた。
歩みを止める国民を背に、両手を広げて再び叫ぶ。
「早く逃げなさいッ」
「いやだ…、王女、シェリル王女っ!!」
「逃げるのよ、王女の言うとおりにするの!!」
子供の泣き声が聞こえ、親がその子を抱きかかえて逃げる姿が浮かんだ。