第12章 【淡い夢】
シェリルside
* * * *
深夜、今日は南海生物が現れたために、謝肉祭が開かれている。
仕留めたのは、私の愛する人、ジャーファル。
その、最後になるかもしれない勇ましい姿を見て、一人、泣いていた。
ひんやりと冷たくなった、冴えた頭で考えた末にたどり着いた私の答え。
国民の女性にちやほやされている王の元へと、ゆっくりと歩みだす。
そして、スッと両手を組み、頭を下げて跪く。
「シンドバッド王よ、内密なお話があります」
酒に弱いハズのジャーファルは、八人将の人たちと一緒に酒を飲んでいる。
シンに切り出すチャンスは、きっと今しかないだろう。
彼が酒に酔い、思考がままなっていない、今が…。
「いいだろう。来なさい、シェリル」
「はい」
察したのか、シンドバッドの顔色は変わる。
そして、王宮に行き、静まり返っている彼の部屋で中、私は口を開いた。
影がズズズ…、と揺らめき始め、月明かりがそれを映し出す。
「今夜、シンドリアを出ます」
「…それは、サラクの皇帝が原因なのか?」
「はい」
躊躇うことなく言葉を返し、私は自らの手で、左腕にある、ジャーファルとの契約痕を消し去った。
ジュッ…と、熱せられた鉄が水に落とされたような音。
草模様の痕が、跡形もなく消える。
「例え、サラクを捨てた王女でも、最後は自分の手で弔いたいんです」
「…他にも手はあったんじゃないのか?」
「『七海連合』の理念は、『侵略しない、させない』。そして、シンドバッド王、あなたはその盟主…」
王宮に仕えている者が、サラクを滅ぼす。
そんなことをしたら、他国との同盟の破綻は…、免れない。
だから…、シンドリアと完全に縁を切り離し、私個人の『単独』でやったことだと、そうしなければいけない。