第12章 【淡い夢】
シェリルside
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角を曲がった時に、一瞬見えた、ジャーファルさんの殺意を抱いている鋭い眼。
蛇の様に吊り上がり、静かな怒りを宿していた。
影が、音を立てずにゆらめく。
(滅ぼされる前に、滅ぼしてしまおう)
私は、自分の故郷、大切な国でありながら、見捨ててしまった。
だから今度は、ちゃんと終わらせよう。
かつて、豊かで平和だった国を。
今、貧困と独裁制で荒れ果てている国を。
自分の手で、0に還す。
(…ジャーファル、)
「あなたが手を下す前に、私が…」
責任を、…サラクを治めていた、王女としての責任を。
たった一人の双子の兄を、皇帝を自らの手で殺める。