第12章 【淡い夢】
ジャーファルside
* * * *
私のシェリルが泣いている。
彼等の会話は、終始、すべて聞いていた。
彼女の決意も、彼の企みも…。
「シェリル…」
…ビクッ
「ジャーファル…?」
泣くのがピタリと止まる。
濡れた頬に両手で触れ、傷ついた彼女を見下ろす。
疲れきっているのか、反応が遅く、ふらついている。
「ん?」と…、彼女は微笑んで首を傾けた。
「…シェリル、今日はもう休みなさい」
「え?」
「仕事は私が片付けておきますから。…いいですね?」
彼女の返事も聞かないまま、私は振り返ってシンの元へ歩き出した。
(サラクの国が、シンドリアを狙っている…)
あの皇帝は、とても残忍で危険だ。
早くシンドバッド王に、彼の企みを伝えなくては…。
『私は、シキを殺す』
シンドリアを狙い、シェリルを泣かせた、あの男は許さない。